PROGRAM NOTE

「Ark of promise」

 

厚く塗り込められた 仰ぐ鈍色へと
翼持たざる者は 悠久を映して
それは浮かべて飛ばす 君へ綴る言葉
願うことを覚えた 童歌のように

 

あの雲が割れた先 まだ知らぬ道標
終末を待ち侘びた 邂逅を夢に見る

 

やがて時が満ちれば 全てわかるだろう
いつか必ず会おう 約束の方舟で

 

白き定めは遠く 今は誰の元へ
姿見せあわずとも 響きあう世界で
それは路傍に咲いて 枯れるだけの生命(いのち)
祈る窓辺の風と 同じ匂いがした

 

あの雲が裂ける時 動き出す終焉に
最後に何を思い 空へと還すのか

 

どうか見失わずに 君ゆく旅路で
いつか望んだ明日(あす)と きっと出会える日まで

 

あの雲が割れた先 現れた道標
終末に流れ出す 調べに導かれ

 

やがて時が満ちれば 全てわかるだろう
いつか必ず会おう 約束の方舟で

 

● 解説 ●
「吟遊詩人」――中世ヨーロッパに盛んだった、抒情詩を詠いながら各地を遍歴した詩人たちのことで、リュート(ギターのような弦楽器)等を片手に、物語や理想の愛を歌いました。《Ark of promise》は、吟遊詩人のように、女神たちが語り歌っている様子を思い描きながら聴いていただきたい楽曲です。アコースティックギターを伴奏に歌われる言葉は、Kleissis楽曲の中でもとりわけ第三者的な目線。まさに、或る物語を語っているような印象を受けます。

そして、この楽曲は三拍子。《贖いのアリア》のアイリッシュフルート、《さよならの彼方へ》のティンホイッスル等、ケルト音楽の要素をたびたび取り入れてきたKleissis楽曲ですが、最もその趣向が強い楽曲です。民族音楽的な色が濃いことで、この楽曲だけ時の流れが違うような、過去か異世界か、切り取られた物語を語っているような、そういった印象をより強くしてくれます。

「混沌」「破壊」「終末」にはじまった、Kleissisの物語。『ノアの箱舟』において、神に命じられた通りの箱舟を造ったノア一家と動物たちは、全てを無に帰す大洪水が静まった後、神の約束通り、助かった命をもって新たな大地を踏みしめます。約束の箱舟(Ark of promise)に乗った私たちに、女神たちは、どんな新しい世界を見せてくれるのでしょうか。そこにはきっと、大きな祝福の虹が、架かっているはずです。